第1回 「ゴルゴ13と租税条約と違法行為への課税」
ゴルゴ13といえば、スイス銀行の口座を使っていることで有名です。
実際にスイス銀行を使って暗殺の代金を受領した場合、どのようになるのでしょうか。
まず、スイス銀行を利用するメリットとしては、秘密性が高いことが挙げられます。基本的にスイス銀行に口座を持つクライアントの情報は、国家権力に対しても開示されることはないとされていました。
とはいえ、昨今そういうわけにもいかず、平成23年(2011年)には日本とスイスの間で租税条約が結ばれ、税金の徴収について情報を交換することとなり、口座の秘密も完全ではなくなってしまいました。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/sy220521asw.htm
これにより、今後のゴルゴ13の口座は国税当局が望めば把握されることとなってしまった訳です。
そもそも、暗殺による報酬に対する課税はどうなるのでしょうか。
所得税では、収入の原因が適法か違法かを問題としていません。逆にいうと、違法行為による収入であってもその収入に対しては課税が生じます。
所得税基本通達36-1 https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm
つまり、暗殺による収入であっても、しっかり所得税・住民税はかかることになります。
ゴルゴ13の場合、暗殺によって相当の収入を得ているようですから、税率も相当に高くなると思われます。但し、遠征費用・弾薬購入費用・現地工作費用などは経費で認められる可能性があります。(領収書等が残っていれば、ですが。)
当然ながら、ゴルゴ13は長年に渡り確定申告は行っていないでしょうから、もし税務調査が入った場合は最大7年間さかのぼって追徴が行われます。
更に、無申告の重加算税が課せられるでしょうから、延滞税・利子税等合わせて本来納めるべき税額の2倍程度になると思われます。いずれにせよ、真っ当に稼いだお金から適正な税金を今のうちに払うほうがよいでしょう。
今後、ゴルゴ13が国税当局と戦う話も出てくるかもしれません。少し期待しています。
◆実際は
違法行為に対する課税としては、助成金詐欺やオレオレ詐欺(母さん助けて詐欺)などが該当します。
企業が助成金を不正に受給した場合、その助成金全額を返還した上で、その助成金は収入として計上しそれに対する税金も払わなければなりません。
また、オレオレ詐欺の場合も同様に、被害者に返金した上で、税金を払う必要があります。しかし、捕まるのは末端構成員で、実質所得者課税の原則があるため返金と追徴に及ぶことはほとんどないそうです。(税務署OB談)
実質所得者課税の原則(所得税法第12条)http://www.houko.com/00/01/S40/033.HTM#s1.4
※このコラムは、作成時の法令等に基づいて作成されています。今後の法令改正等により実情とそぐわなくなる場合がありますのでご了承ください。また、登場する取引等は明らかに外国人等により国外・地球外に於いて行われている場合がありますが、原則として全て日本国籍を持つ人間・内国法人等が行う日本国内の取引と仮定しております。なお、登場する人物・組織はしばしばスピード違反・詐欺・強盗・殺人などを行うことがありますが、弊社がこれらの違法行為を推奨・保障するものではありません。